労使自治への闘い 不当労働行為との闘い 和解勧告受諾で勝利解決

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闘いへの取り組み

和解勧告受諾で勝利解決(1月8日)

▲和解勧告受諾で勝利解決(1月8日)

第61回定期全国大会以降の取り組み

  1. 全労災は2012年7月、2012年度夏期一時金交渉における機構の交渉姿勢と一時金の大幅削減、厚生労働省の交渉拒否が、2012年4月4日付和解協定に違反する不当労働行為にあたるとして、日本医労連と連名で神奈川県労働委員会に不当労働行為救済申立をおこないました。

    事件の審査は、2012年12月までに4回の「調査」、第61 回定期全国大会以降では、4回の「審問」がおこなわれました。全労災は、毎回白衣姿の組合員を動員し、事件の勝利解決をめざす強い決意を示してきました。

  2. 2月25日の第1回審問では「主尋問」、4月15日の第2回審問では「反対尋問」がおこなわれました。

    全労災は、横山委員長、小池前副委員長、菅原書記長、田中中央執行委員の4人の証人が、厚労省・機構の主張に反論する「陳述書」と証拠を示し、代理人弁護士の尋問に答えるかたちで証言しました。

    一方、機構側証人の細川理事は、「理事長の裁量による変更権」「機構の置かれた立場」をことさら強調し、機構の交渉姿勢や発言をすべて正当化しましたが、夏期一時金を大幅に削減しなければならなかった明確な理由については一切語りませんでした。

    また、和解協定締結から3ヵ月後に再度の申立に至った経過や和解協定の解釈など、全労災側に問題があったかのように無理矢理「立証」しようとする意図を露骨にして尋問してきました。

    しかし、全労災側証人は、白衣姿で傍聴席を埋め尽くした組合員に大いに激励され、堂々と機構側代理人に反論しました。

  3. 5月23日には、審査委員長の要請により和解に向けた協議がおこなわれました。

    全労災は、和解条項案として「期末・勤勉手当は労使協定にもとづいて支払うこと」「厚労省は労使協定を尊重すること」を提示しました。これに対して厚労省も機構も、全労災が示した和解条項案を検討もしないとして、対決姿勢を明確にしました。

  4. 7月1日には第3回審問、9月9日には第4回審問がおこなわれました。

    全労災は第4回審問に、「理不尽な厚労省の介入と機構の不当労働行為責任を断罪する」よう求めた最後陳述書を提出するとともに、機構に「出向」している厚生労働省幹部が、機構でも重要ポストに就き、全労災との団交にも出席している実態を、厚労省の機構支配の証拠として提出しました。さらに横山委員長が補充陳述をおこない、「月8日」協定の不履行や労働協約なし夏休みの強行など、機構が労使交渉をないがしろにしている実態を明らかにし、「『労使自治の原則』が遵守され、正常な労使関係を構築するために全面救済命令を求める」と訴えました。

団体署名の取り組み

  1. 全労災は、7月1日付で「声明」を発表し、「『労使自治の原則』に則った正常な労使関係と労災病院の“安全・安心”の医療・看護を確立するために、神奈川県労働委員会が公正な全面救済の命令を下すことを求めて、引き続き全力をあげる」と決意を表明しました。

    また、団体署名「厚生労働省・労働者健康福祉機構による不当労働行為事件の全面救済命令を求める署名」に取り組むことを決定しました。日本医労連・全労連も加盟組織に文書を送付し、取り組みを訴えました。

  2. 「国による不当労働行為」「政府による労使自治への介入」に反対する全労災のたたかいは、地域・民主団体に大きな共感を呼びました。団体署名は、特に公務員や教職員など公務労働者の労働組合で積極的に取り組まれました。団体署名の取り組みを契機に、全労連がILO(国際労働機関)に提出した要望書にも独法の労使交渉に対する政府の介入に反対する意見が記載されるなど、公務員の労働基本権回復をめざす運動でも、全労災のたたかいがクローズアップされました。

    団体署名は12月までに2,130 団体分を集約し、日本医労連以外の団体は約4分の3にも及びました。

  3. 全労災と日本医労連は9月24日、神奈川県労働委員会に署名を提出し、全面救済の命令を下すことを要請しました。行動には横山委員長、日本医労連・山田委員長、全労連役員、全国組合協議会の代表も参加しました。以降、12月の命令前までに、日本医労連や神奈川県医労連、神奈川労連の協力も得ながら、合わせて7 回の署名提出・要請行動をおこないました。

命令交付とその後の取り組み

  1. 神奈川県労働委員会は12月19日、機構の不当労働行為をほぼ全面的に認定する命令を発しました。

    その内容は、「交渉を尽くさないまま一方的に不利益変更することは許されない」「機構の行為は、組合の交渉力を弱め、その弱体化をもたらすおそれがあるものとして支配介入にあたる」として、機構の不当労働行為を厳しく断罪しました。「命令」は厚生労働省に対する申立を棄却したものの、機構に対する申立では全労災の主張を全面的に認める画期的な命令となりました。

    全労災は同日、「声明」を発表するとともに、厚生労働記者会、神奈川県政記者クラブで弁護団、日本医労連とともに記者会見をおこないました。

  2. 全労災は12月25日、「命令を真摯に受けとめ、再審査申立をおこなわないこと」を機構に要請し、労使関係正常化に向けて協議を開始することを訴えました。「再審査申立するな」の要請は、全労災のすべての支部、日本医労連加盟組合からも機構に多数届けられました。

    また、一部の労災病院の病院長らも支部の要請に応え、機構に同様の要請をおこないました。これに対して機構は、「あくまでも第三者機関で争う」として、12月27日、神奈川県労働委員会の判断に誤りがあるとして、中央労働委員会に命令取消を求めて再審査の申立をおこないました。

    機構の動きをうけ、全労災も2014年1月6日、厚生労働省と機構を被申立人とする再審査の申立をおこないました。事件は今後、中央労働委員会で争われます。

中央労働委員会で勝利の和解解決

  1. 再審査となった中央労働委員会では、3月28日の第1回調査を皮切りに、5月22日、7月14日、9月3日、10月24日、12月1日、1月8日の7回調査がおこなわれ、10月24日の第5回調査では中労委から和解案が提示され、12月1日、1月8日の調査で協議されてきました。

  2. 1月8日、中央労働委員会で2012年度夏期一時金交渉にかかる不当労働行為事件の「再審査」第7回調査がおこなわれ、第6回調査から継続になっている和解解決に向けた協議がおこなわれました。協議は長時間にわたり、全労災の組合員、日本医労連、全国組合の仲間が深夜まで見守るなかで、最終的には「和解勧告書」が中央労働委員会から提示され、機構側も受諾しました。

    機構は、紛争が長期化したことについて遺憾の意を表明するとともに、全労災に、解決金として75万円を支払うことが明記され、全労災・日本医労連「全面勝利」の和解解決となりました。健全な労使関係確立と一時金交渉正常化へ前進する画期的なものです。和解勧告書の第1項には「労使自治の原則に則り、団体交渉において誠意をもって十分に交渉をつくして合意形成に努める」、第2項には「機構は、必要な資料を提示し、十分説明をつくす」ことが明記さ れています。「労使自治」は労使関係の基本原則で、労使のことは労使交渉で決める、厚生労働省など他者の介入は許されないという当然の原則を再び確認する ものであり、神奈川県労働委員会での「不誠実団交」と指摘されたことを踏まえたものといえます。

    また、和解勧告書第3項には、「当分の間、『職員の期末手当及び勤勉手当の支給に関する達』第1条、第2条及び第2条の2のが適用されないことを相互に確認する」として、理事長が規程を無視して一時金を決定できる権限(達第2条の2)を“凍結”しました。この条項は労働福祉事業団から労働者 健康福祉機構に変わったときに、「達」が就業規則と同じと主張していたにもかかわらず、全労災に何の通知もなく、勝手に入れた条文で機構がこの条文を根拠に削減を強行していたものです。それ以前は規程分の支給率の期末・勤勉手当は規程どおり支払われていました。この条文が凍結されたことはこれまでの機構の姿勢を正すものであることは明白です。

    なお、期末手当・勤勉手当の支給率が記載されていた達第1条も“凍結”されることとなり、今後の一時金の決定は唯一、労使の団体交渉に委ねられることになり、また、今後一時金の労使交渉が紛糾した場合には、中央労働委員会の「あっせん」で解決の道を探ることも明記されました。

    今回の基本的な紛争の根源は、私たち労災病院で働く労働者が労働基準法や労働組合法などが適用される労働者であるにもかかわらず、使用者側がその基本的な労使関係から逸脱して労働条件の決定を労使関係とは別の理由(例えば国の方針)で強行決定しようとしたところにあります。国の方針や経済情勢 などはつねに経営にも医療にも労使関係にも影響を与えますが、労使関係のルールから逸脱しては正常な労使関係は成り立ちません。

    57年の全労災の歴史の中で、中央労働委員会での和解は初めてのケースとなりましたが、今回、機構が反省し、中央労働委員会で労使関係の原則 が確認されたことは重要です。全労災は今後、今回の闘いを踏まえ、正常な労使関係を追求していくとともに、生活と医療を守る闘いに全力をあげていきます。

祝勝会

▲第63回定期全国大会初日におこなわれた不当労働行為救済申立勝利和解の祝勝会で

第63回定期全国大会の初日終了後、1月8日に中央労働委員会で勝利の和解解決となった不当労働行為救済申立ついての祝勝会が開催されました。この祝勝会には大会の来賓である吉村得王彦書記次長、JAL争議団の宍戸冨美子さんに加えて、この不当労働行為救済申立の闘いを前面的に支えてくれた3名の弁護士及び神奈川県労働委員会での不当労働行為認定に大きな力となった水谷正人労働者側委員(神奈川県労連副議長)、鎌倉幸孝日本医労連副委員長もかけつけてくれました。横山智子中央執行委員長のあいさつの後、伊藤幹郎弁護士、上条貞夫弁護士、井上啓弁護士、水谷正人労働者側委員から挨拶をいただきました。3名の先生及び水谷委員は、労働者健康福祉機構から明確な謝罪がなされたこと、理事長の変更権を凍結したこと、解決金も支払うことになったことで明確な勝利の和解であることが強調され、機構の姿勢を不当労働行為であるとして認定した神奈川県労働委員会の命令の趣旨を踏まえたものであることをお話していただき、この約2年半勝利まで闘い抜いた全労災の組合員に心から連帯の挨拶をいただきました。また、鎌倉日本医労連副委員長も日本医労連に結集する仲間をはげますものであると挨拶しました。祝勝会は最後に、岩塚晶子副委員長の音頭と樽村和幸中国支部代議員のギターで、来賓を含めて全員で「頑張ろう」を歌い、「闘いはここから、闘いは今から」の決意を新たにしました。